弁護士高橋信雄
最近多い、デリバティブ取引に関する金融機関とのトラブル相談について、よくある質問をQ&A形式でまとめました。
デリバティブ取引に関する相談は、クーポンスワップや通貨オプション等について専門的な知識を有する弁護士に相談することが重要です。金融商品取引法や金融商品販売法等の法令に関する知識のみならず、その商品自体に内在する問題点を的確に把握することが不可欠だからです。当職は、長年の金融機関での勤務経験からデリバティブについて多くの知識・経験を有しています。どうぞお気軽にご連絡・ご相談下さい。
Q1、当社は、水産物の輸入販売を行なっています。5年前に銀行にセールスされ、期間10年の円ドルのクーポンスワップ契約を結びました。当初は為替差益が出ていたのですが、昨年来の円高ドル安で毎月数百万円の為替差損が発生しています。このままでは、あと数ヶ月で資金繰りが破綻してしまいます。このまま、契約の履行を続けるしかないでしょうか?
A1、そんなことはありません。資金繰りが破綻する前に、色々な対策を検討することが可能です。
金融機関は、デリバティブ商品の販売にあたり、商品の仕組み、リスクの所在等について、説明義務を負います。また、顧客の知識、経験、財産の状況等に照らして不適当なセールスをすることも禁止されます。したがって、商品の説明義務を銀行が尽くしていなかった場合や、あなたの会社の輸入規模、財務状況から見て、導入したクーポンスワップが過大であった場合は、銀行は損害賠償義務を負うことがあります。
そもそも、10年間のクーポンスワップ契約はあまりにも長期の契約であり、為替リスクの大きさや、その間の輸入規模の変動可能性を考えれば、適合性の原則違反が疑われる事案と思われます。資金繰りが破綻する前に、是非弁護士に相談すべきです。
Q2、当社は日用雑貨の輸入卸売りを行なっています。3年前、銀行にセールスされ、期間7年の円ドルのクーポンスワップ契約を結びました。昨年来の円高ドル安で、毎月数百万円の為替差損が発生しています。最近、銀行にもう為替決済ができないと言ったところ、銀行から連絡があり、「スワップ契約の解約に応じる。ついては、解約清算金全額を融資する」と提案されました。そのまま提案を受けてもいいでしょうか?
A2、そのまま、提案を受けることには問題があると思われます。
まず、期間7年ものクーポンスワップ契約の解約清算金は、現時点でまだ残存期間が4年もありますから、銀行の計算方法に従うと相当多額になると推定されます。仮に数億円規模の解約清算金であった場合、その商品を時価評価していなければ、清算金相当額が一挙に損失に計上されます。損失額によっては、債務超過に陥る可能性すらあり、今後の資金調達が困難になることも予想されます。
あなたの会社の場合、そもそも期間7年もの長期のクーポンスワップに適合性があったのか疑わしく、商品の仕組みやリスクの所在も十分な説明を受けていたのか検証する必要があります。銀行の提案をそのまま受ける前に是非弁護士に相談するべきです。
Q3、当社は木材の卸売りを行なっています。輸入は行なっていません。5年前、銀行にセールスされ、期間10年の円ドルのクーポンスワップ契約を結びました。昨年来の円高ドル安で、毎月数百万円の為替差損が発生しています。
このままでは、資金繰りが詰まることは時間の問題です。何とかなりませんか?
A3、あなたの会社の場合、輸入を行なっていないのに、クーポンスワップを導入した理由が質問だけではわかりません。しかし、これまで、銀行は輸入を行なっていない会社に対しても、原料の仕入れに関して、間接的に為替リスクを負っている等の理由をつけて長期のクーポンスワップ、通貨オプションをセールスしていたことがあります。もし、このような理由でセールスされ、商品の仕組みやリスクの所在も十分な説明をされていなかったのなら説明義務違反、適合性の原則違反が疑われる事案です。是非弁護士に相談することをお勧めします。
Q4、当社は電子部品の輸入販売を行なっています。5年前に物流倉庫を建築する際に設備資金をメイン銀行から融資を受けました。その際、7年間の通貨オプション契約の締結を何回もセールスされ、やむを得ず締結しました。現在、そのときに締結した通貨オプション契約が原因で毎月数百万円の為替損失を被っています。何とかなりませんか?
A4、銀行からの融資との抱き合わせセールスは、優越的地位の濫用にあたり、独禁法違反の可能性があります。また、導入した通貨オプション契約自体、説明義務違反、適合性原則違反の可能性もあります。早急に弁護士に相談するべきです。
(2011/3/25掲載)